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2023 / 08 / 14 ( Mon )
22 : 24 : 34 | 未分類 | コメント(0) | page top
<<鑑賞日記>> 8月26日 大森たつし(マリンバ)&柗井拓野(サックス)コンサート
2023 / 08 / 29 ( Tue )

涼風祭最終日、お迎えするのはマリンバの大森たつしさん、サクソフォン柗井拓野さん。
ステージ後半はピアノ 細田詩織さんも賛助出演なさいます。

前半
男子二人が颯爽と登場、演奏が始まりました。
ヘンデル「パッサカリア」

sソプラノ吹き


「パッサカリア」とは、変奏曲の形式をとっている音楽様式のことで、元はヘンデルの「ハープシコード組曲」をノルウェーのハルヴォルセンが弦楽器用に編曲したもの。
(かつてワタシの娘がチェロ弾きの親友とヴァイオリンで弾いていたのを思い出し、懐かしさのあまり涙腺が緩む事態に。)
超絶技巧を組み込んだ旋律は、マリンバとサックスでも同様、時にダイナミック、時に繊細。心の襞に音色が染み込んでくるようでした。

s大森トーク最初


たつしさん「打楽器と管楽器というちょっと珍しい楽器の組み合わせを楽しんで頂きます、まずは各々無伴奏曲、サクソフォンから。」

※サックスはキラキラ金色なのに木管楽器。
トランペットやホルンは息を吹いたとき唇を振動させて音を出すので金管楽器に分類され、クラリネットやサックスはリードと呼ばれる薄片を息で震わせて音を出す木管楽器に分類されるのだそうです。
拓野さんは、アルトサックスとソプラノサックスを吹き分けます。

sアルト持ってトーク


ボノー作曲「ワルツ形式によるカプリス」
20世紀フランスのポール・ボノーは管弦楽曲の他、バレエ音楽、映画音楽なども作曲。ナルホド、軽妙洒脱なパリの雰囲気がそこはかとなく漂ってくるようです。
一、二、三と踊りたくなる三拍子、だけど「カプリス」(奇想曲)というタイトル通りテンポが速くなったり遅くなったり気まぐれな曲。気兼ねのいらない独りの演奏、拓野さん、今日はどんな気分で吹いてくださったでしょう?


続いては、マリンバ独奏です。
松村崇継「ランド」
悠久の大地、地球の青い海をイメージしました。水の中を深く深く潜っていって、水の泡がぷくぷくと昇っていく様をじっと見つめているような。

マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
イタリアのヴェルガの小説を元にしたオペラの一篇。三角関係のもつれから起きる決闘や殺人が描かれた劇!なのにその幕間に演奏される曲は、えもいわれぬ美しさ。細かい連打は転がり続ける粒のような音を滑らかに繋げます。

sマリンバマレットクロス

sマリンバマレットクロス3


マリンバに目をやると端から端まで巧みに四本のマレット(=先端に球体がついたバチ)を操るたつしさんの姿がありました。楽器の下に見える足捌きも滑らかで無駄がなく。細く絞ったズボンの裾と黒い靴は演奏用でしょうか。美しい身体の動きは、美しい音色と相関関係にあるのだなぁと思います。

前半最後は
前田真吾 「コンチェルティーノ」

マリンバ&サックスという組み合わせの曲が殆ど無いので、委嘱して作ってもらったという小規模のコンチェルト。転調したり、飛び跳ねるような音が出てきたり。サックスの長いメロディの下で奏でるマリンバの「ぶんちゃかちゃっちゃ、ぶんちゃかちゃっちゃ」という軽快なリズムは「すっとこどっこい、すっとこどっこい」にも聴こえて(笑)地元のお祭りで、お楽しみ抽選会が始まるよ〜さてさて何が当たるかな!?みたいな高揚感がありました。みんなの耳にはどんな風に聞こえたかな?

s二人演奏背景緑



休憩挟んで後半は、細田詩織さんが登場、三人の演奏で。
オーケストラの役割を担うピアノが加わり音に厚みがぐっと増しますね。

s三人トーク大森 (2)

s細田おほほ


ブラームス「ハンガリアン舞曲第5番」

この曲、8月6日鈴木舞さん小林侑奈さんの回のアンコールでも演奏されました。遠い記憶を辿るとワタシも小学校の音楽の時間にアコーディオンで弾いたっけ。ブラームスもきっとビックリのマリンバ&サックスバージョン、スピード感とワクワク感は全く変わりません。

たつしさんによると、今日の出演者の共通点は 洗足学園大学で学んでいた こと。(私事でスミマセン、私の姉も卒業生。そして実家ご近所にはたつしさんと打楽器同窓の方がお住まいです。なんだか嬉しい学校繋がり。) 同大学は、アニメ声優やバレエ、電子音楽を学ぶ方もいらっしゃるカジュアルな学校だそう。「のだめカンタービレ」のロケ地にもなっていましたね🎶

後半二曲目は、がらり雰囲気変わって
ロルフ・ラヴランド「You raise me up」

s三人演奏真剣


「You raise me up」という表現は旧約聖書の詩編にも出てくる言葉ですが、アイルランド民謡に似たメロディに耳を傾けながら、歩いてきた道程をしみじみ振り返るような気持ちになりました。
ゆったりとしたアルトサックスに続いてマリンバがメロディを奏で、後半はソプラノサックスで。転調したピアノも素敵でした。

モンティ「チャルダッシュ」
酒場で一杯ひっかけて踊りたくなる「チャルダッシュ」はハンガリーの民族音楽、19世紀ヨーロッパで大流行した何度聴いても愉しい曲。
ピアノの詩織さんも笑顔でノリノリ。

s柗井演奏アルト2


テンポアップするたび、たつしさんはマリンバに掛けてあるドラえもんのポケットみたいな袋?から、違う色のマレットを取り出していました。ヘッドの素材や硬度によって音色も変わるというマレット、いったい何本お持ちなのか聞いてみたいな。

今日最後の曲は、松村牧亜「IRONY」
東京藝大とジュリアード音楽院で作曲を学び、ニューヨークを拠点に映画やテレビ等でも活躍している作曲家による マリンバ、ピアノ、ヴァイオリン用の曲を、サックス用にアレンジして初の演奏。
ironyというタイトルを聴いて、皮肉? 否、私は様々な色に染まる大都会の景色を想像しました。夕陽の差す高層ビル群、雑踏の中を行き交う人々の髪の色、肌の色… サックスの音色が時折尺八のように聴こえました。

s三人演奏


拍手喝采、熱くせっかちなお客さん?のアンコールに応えて
アンコールは、久石譲「Summer」
清里の森の楽しかった夏のシーンを思い出しながら聴きました。

s三人終わって笑顔


たつしさん、拓野さん、詩織さん、素敵な時間をありがとうございました。
是非またコンサートでお目にかかりましょう。

〜〜〜〜〜〜〜

今年の涼風祭も無事終わりました。
実行委員の方々、清里の森管理センターの方々、支えてくださった全ての皆様に感謝申し上げます。
これからも応援しましょう、涼風祭。

涼風祭全回鑑賞のご褒美に高原野菜をいただきました(^。^)
心もお腹も幸せいっぱい
森のスズコでした。
09 : 06 : 56 | 感想文 | コメント(2) | page top
<<鑑賞日記>>8月20日 山口裕之ストリングカルテット
2023 / 08 / 25 ( Fri )

残り二公演となった涼風祭。音楽堂前には移動販売車や葡萄を売るテントが出て、お客さん達はなにやら楽しげです。

N響の四人をお迎えするのは、連続四年目。
長年コンマスの重責を務めた山口裕之さんと、彼の率いる実力派のヴァイオリン宇根京子さん、ヴィオラ飛澤浩人さん、チェロ山内俊輔さんです。

s開始4人


毎年同じ台詞で恐縮ですが、
バルトークって誰?
ベートーヴェンってどんな人?
弦楽四重奏の聴きどころは?

お知りになりたい方は過去の鑑賞日記をご笑覧ください。
2022年鑑賞日記
2021年鑑賞日記
2020年鑑賞日記

さて四年目はどんなバルトークでしょう?
私も前勉強無しで、弦楽四重奏 第6番 初めて聴きました。

s左2人

s右2人


バルトーク「弦楽四重奏曲 第6番 Sz.114」

1939年に作曲された最後の弦楽四重奏曲。ビオラのゆっくりなボウイングで「悲しげに」始まり、それが皆に伝播していくよう。楽章が進んでも不毛で繊細な調べは続き、いつまでも終わらない不条理劇を観せられているかのよう。
世界史を紐解くと…1939年、ナチスドイツがポーランドになだれ込み、世界は第二次大戦へと突き進んでいたのでした。ヨーロッパに不穏な戦火が拡がる中、バルトークはアメリカへ亡命、この曲がヨーロッパで書かれた最後の作品となりました。船でニューヨークへ向かいながら、何度も祖国ハンガリーを振り返った作曲家の胸中は。そう知ると、何故この曲が苦虫を噛み潰したように厳しく、受け入れがたい気持ちになるのか、少しだけ謎が解けた気がします。

s遠景4に


同時に、山口裕之さんがこれを選んだ意味も考えてみたい。今も続く紛争、内戦や人権侵害。そういった現在進行形の絶望感を表してはいないだろうか?と思うのです。

しかしながら客席に目をやると、ゆらり首が前に倒れている人が散見されました。あぁ、眠ってるぅ…とそれを見ていた私もなんということでしょう、最後の楽章で意識が遠くなり、観客の拍手で目が覚めました。わ、寝てしまった!
ロマン派を聴き慣れた耳には正直難解な第6番でしたが、ベートーヴェン以降最大の業績と讃えられているバルトークの旋律を、いつか再チャレンジして聴きたいと思います。



休憩挟んで後半

s第2部はじめ山口マイク

シューベルト「弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D810 『死と乙女』」

※ オーストリア生まれのフランツ・ペーター・シューベルト(1797〜1828)の一生は、ベートーヴェンの後半生と重なっています。彼はベートーヴェンの葬儀に参列、酒場で「この中で最も早く死ぬ奴に乾杯!」と不吉な音頭をとり、一年後に寿命が尽きたという逸話が残っています。死因は腸チフス、享年31歳。二十代で梅毒に罹患してからずっと体調不良。それでも1000近い未完を含む作品群を遺し、音楽学者ドイチュによる目録(D)で整理されています。

Franz_Schubert_by_Wilhelm_August_Rieder_1875.jpg


ワタシの父はシューベルトが大のお気に入りで、実家の三姉妹は歌曲「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」をレコードで聴いて育ちました。
しかしシューベルト晩年の弦楽四重奏第14番は、全ての楽章が短調で書かれています。第2楽章が歌曲『死と乙女』(作品7-3 D531)に基づいているので、この愛称で親しまれていますが、自身が病魔に冒され死期を感じていたから、こんなにも暗く重いのかもしれません。

s死と乙女4人


1楽章、感情が激しく噴出するドラマチックな出だしを聴くたびに思い出すのは、昔NHK朝ドラで放送していた「花子とアン」。お煎餅をバリバリ食べてる大富豪の前で弦楽四重奏「死と乙女」が演奏される、という一シーン。ヒロインの悲劇的な最期を予感させるようで印象に残りました。
2楽章、死を悼むかのような美しく静かな旋律。
3楽章、時折激しい怒りや嘆きの音が。
4楽章、馬のギャロップのように切迫した速いテンポで、四つの楽器が呼応しながら徐々に高みに昇っていき、最後は短調の和音で締めくくられます。

ベートーヴェン「弦楽四重奏曲『大フーガ』変ロ長調 op.133」

今日の三曲目、これまた作曲家晩年の作品。ベートーヴェンが完全に聴覚を失った1825〜1826年に書かれました。
19世紀から長い間、大フーガへの理解は進まず失敗作と見なす向きもあったそうで「わけのわからない取り返しのつかない恐怖」「人好きのしない曲」「中国語のように不可解」と、散々な言われようだったそうです。
しかし現在では評価が好転。ストラヴィンスキーは「絶対的、永久に現代的な楽曲」と述べています。

s大フーガ4人


私はこれを聴きながら、前衛的でまるでバルトークの曲みたい!と思ったのです。
理解に遠く苦行のようでもとりあえず聴いてみる、それもコンサートの狙いだったのでしょうか?山口裕之さんにお尋ねしたいです。

sお辞儀4人


アンコールは今回も日本の歌メドレーで。
めっちゃ硬い乾飯の後の綿菓子のような童謡のメロディが耳に優しく感じました。

s最後


まさかの寝落ちに驚いた自分、次はちゃんと目も耳も開いて拝聴します。
粛々と素晴らしい演奏をしてくださったカルテットの皆さま、ありがとうございました。

森のスズコ
10 : 24 : 11 | 感想文 | コメント(0) | page top
<<鑑賞日記>>津軽三味線&和太鼓演奏会 -力音-
2023 / 08 / 24 ( Thu )

涼風祭もいよいよ後半、本日は津軽三味線名手 山中信人さんと、和太鼓奏者 鷹-TAKA-さん、塚本準也さんをお迎えします。

昼は大変な土砂降りでしたが、開演ベルが鳴る頃には雨は小降りとなり、チラシが足りなくなりそうなほどの満員御礼状態。

前半(第一部)は、山中信人さんの独演です。
「津軽あいや節」
舞台に立てかけて並んでいた三味線の真ん中の一本を手に取って、演奏が始まりました。始まりは静かに、次第にべべべべべ〜ンとロックな世界に引き込まれていきました。
私は何処か異国のバザールの雑踏の中にいるような気分に。三味線は15〜16世紀、戦国時代に琉球から伝来、比較的新しい楽器だそうで、楽器分類上はギターやシタールと同じリュート属だとか。だからなの?異国情緒を感じた私でした。

sあいや節


信人さん「昨今色々なものが無くなってきましたが、犬の皮を張って作る津軽三味線も、動物愛護という観点から人口の革が使われるようになってきました」と。なんと先程の演奏楽器は、人口の革、プラスチックの撥(バチ)によるものでした。素人の耳にその違いは全く判らず。

ちなみに、津軽三味線と他の三味線の違いは大きさ。棹が太く胴も大きめの三味線は津軽の調べや、浪曲、義太夫などに使われ、津軽民謡を演奏するものを津軽三味線と呼びます。胴には力強い叩き撥に対応できるように頑丈な厚い皮がしっかり張られています。
あぁ、だから太棹は犬の革で、細棹、中棹は猫なのですね…
弦はたった三本。(ネットの解説によると)覚えやすくするために太い順に開放弦をドン、トン、テン、とか、バチですくうとロン、とか口伝で覚えるそうだ。うむ、麻雀のような。

s信人説明


続く「津軽小原節」は、伝統的な材料による楽器、犬の革、象牙の糸巻、ベッコウの撥で。「生命をいただいていますから、腕を磨いて命をかけて弾きます」と信人さん。
湿気の多い日は弾きにくいそうですが、どっこい流石パーフェクトな演奏ぶりでありました。

※ベッコウ(鼈甲)は、熱帯に棲むウミガメの一種、タイマイの甲羅の加工品。絶滅危惧の野生動植物を守るためのワシントン条約により、商業取引が禁止されています。同様に、アフリカゾウの牙も厳正に管理されるようになりました。

さて、
信人さんには東京と清里でお世話になっているご夫妻がいらっしゃいました。知る人ぞ知る森の俳人T氏は六月に急逝なさり、今日はT氏を偲んでの演奏を と、T夫人から贈られたという銀鼠色の浴衣を身に纏い、舞台に上がられました。
信人さん、T氏の遺した句を一つご紹介「旅立ちは ここ 郭公の鳴くところ」。

満天の星、月が美しい清里の夜空を想いながら「荒城の月」
続いて、亡くなった大切な方の旅立ちを願って「恐山へ」。
清里の地を愛して旅立たれたT氏の魂、今日は蜻蛉かクワガタに姿を変えて帰っていらして、私達を見守ってくださっているのかもしれません。
今は安らかな天の高原にきっといらっしゃると、私も思えてなりません。


一部最後の演奏は「津軽じょんがら節」
信人さんのお祖父様からおばさまに託された価値ある立派なお三味線、それを十六人いる孫の中から信人さんが譲り受けたそうです。その由緒ある楽器と、海外公演で鼈甲の撥を持っていくのは今は難しいということで、プラスチックの撥での熱演、ライトに反射して撥がキラキラと金色に輝いて見えました。


休憩挟んで第二部は、幕の向こうの大太鼓の音から始まりました。
「阿修羅」
ズン…ズン…という地響きのような音に鳥肌が立ちます。
大太鼓の前に仁王立ちしているのは、鷹-TAKA-さん。小太鼓を持って現れたのは、塚本準也さん。兄弟であるお二人の「ヤッ」「ハッ」という掛け声と力強い音が会場に響きます。

s阿修羅2


「屋台囃子」
子供の頃太鼓を叩いていた妹曰く、あれは秩父屋台。
山中師匠も登場して三味線を弾いたかと思うとドラム似の太鼓も叩き、賑やかに。床に座った準也さんは横にした太鼓を両足で挟み込むようにして叩きます。ドコドコドコンコ、ドコドコドコンコ…

s屋台ばやし


「十三の砂山」
MC無しで演目が進みますヨと信人さんが仰ったとおり、ジャズのセッションの如く黙々と熱演が続き、ワタシには何処から何処までがこの曲なのか見分けがつかず…(^◇^;) 🎶

s十三


「打弾」
斜めがけにした大きな太鼓を右手は右側を、左手は左側に加え右側も、高速で交互に打ちまくる準也さん。あれっ、3年前もこのパフォーマンスを目撃してビックリ仰天したのです。左腕の描く軌跡がX(エックス)に視えるんだから!
握った撥が汗ですっ飛ぶことは無いのですか?と公演後、準也さんに愚かな質問をしたワタシでしたが、トレーニングしているから、そんな事態にはならないそうです。恐れ入りました。

sだだんX


「大太鼓」
待ってました!鷹-TAKA-さんの出番です。
先月、富士山大太鼓祭りで見事日本一に輝いた鷹さん。
自分の身体より遥かに大きい太鼓に向かって祈りを捧げるかのように立ち、敬うように、慈しむように、一打一打に魂が込められていきます。
その形はギリシャ戦士が弓を弾くポーズの様であったり、怒髪天を衝く仁王様のようであったり。鍛え上げた身体の造形美にも魅せられました。

s鷹たいこ


「風林火山」
舞台袖からスーッと山中師匠が入ってきて、「シュッ」という合図で次の演奏が始まりました。
風のように素早く動き、林のように静かに構え、火の如く激しく攻め奪い、山のようにどっしりと構えて動かない。文字通りの風林火山。
エアギターという種目があるけれど、エア三味線という種目も出来たら面白いかも。それほど、腕の上げ下げ、撥さばき、左指の動き、全てがカッコ良くロックンロールの如し。世界一!と言っても過言ではありません。

s風林

s風林2

s準也風林


太鼓の若いお二人は、いつも山中師匠にコラコラ!と言われながら修行に励んでいるそうですが、厳しくも優しく時にコミカルなお師匠さんと、お師匠さんを慕う弟子達の練習風景を想像すると、良いものですね〜♡

「イナズマゴロピカ」
笹の葉さらさら…と七夕さまの旋律で始まった最後の曲。徐々に黒雲が近づき、ぽつ、ぽつ、と天空から大粒の雨が。遠雷ごろごろ〜。きたきた来た〜。驟雨を想わせる激しい音とリズムは、火にかけたヤカンのお湯にふつふつと泡が沸き次第に煮えたぎる感じにも似ています。
今年の「イナズマゴロピカ」はまるで線状降水帯、土砂降りの雨。激甚化する地球温暖化の危機をリアルに感じて慄く私です!

sいなずま2

s鷹マイク


万雷の拍手拍手。アンコールは花笠音頭。
お客さんも、にこにこ笑顔の準也さんと一緒に揉み手を打って、
チョイチョイ、はぁやっしょ〜まかしょ〜と口づさみました。

s花がさ隼や

s花がさ信人


さらなるアンコールは、三人の力強いパフォーマンスを再び🎶

命の尊さ、出会いと別れ、明日への希望を感じさせていただいたステージに感謝感激です。
信人さん、鷹さん、準也さん、本当にお疲れさまでございました。

森のスズコ

07 : 49 : 41 | 感想文 | コメント(1) | page top
<プログラム> 第15回涼風祭 最終回 8月26日(土)は、大森たつし&柗井拓野コンサート
2023 / 08 / 20 ( Sun )

7月末に始まった第15回涼風祭も、あっという間にひと月が過ぎ、8月26日(土)はいよいよ最終回。

大森たつし(マリンバ)と柗井拓野(サックス)によるクラシックからポップスまで多彩な音楽ジャンルと、パワー溢れる音の演奏をお届けします。


演奏曲目は、

ヘンデル:パッサカリア
前田真吾:コンチェルティーノ(委嘱作品)
ブラームス:ハンガリアン舞曲第5番


異色楽器による至高のアンサンブルをお楽しみください!


2023_marimba_omote小

2023_marimba_ura小

<ご案内係の清史郎でした>
17 : 45 : 10 | プログラム・内容 | コメント(0) | page top
<プログラム>8月19日(土)は、津軽三味線と和太鼓の「力音(りきおん)」が登場!
2023 / 08 / 14 ( Mon )

2023年涼風祭の第5弾は、国内はじめ、海外でもとても人気のある津軽三味線の山中信人と和太鼓の鷹-TAKA- &塚本隼也の共演。
時に力強く、時に優しく心地よい低音を会場中に響かせる魅力溢れるコラボです。

2023_rikion_omote小

2023_rikion_ura小
22 : 17 : 46 | プログラム・内容 | コメント(0) | page top
<プログラム>8月20日は、山口裕之とN響の仲間たち ~山口裕之ストリングカルテット~
2023 / 08 / 13 ( Sun )

2023年 涼風祭 第6弾は、元NHK交響楽団コンサートマスター山口裕之氏率いるN響メンバーによる弦楽四重奏団。

8月20日(日) 13:30 開場、14:00 開演、
高校生以下の入場料は無料。

演目は以下のとおりです。
バルトーク: 弦楽四重奏曲 第6番 Sz.114
シューベルト: 弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D810 『死と乙女』
ベートーヴェン: 弦楽四重奏曲 『大フーガ』 変ロ長調 op.133

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2023_nkyo_ura小

<ご案内係り 清史郎でした>
05 : 46 : 38 | プログラム・内容 | コメント(0) | page top
<<鑑賞日記>>実力派デュオが贈る珠玉のアンサンブル 鈴木舞(ヴァイオリン)&小林侑奈(ピアノ)
2023 / 08 / 13 ( Sun )

涼風祭、私が楽しみにしている演目のひとつが、華麗なクラシックのデュオ。ヴァイオリニスト鈴木舞さん、ピアニスト小林侑奈さん、涼風祭ではすっかりお馴染みの二人を今年もお迎えしました。

ステージに艶やかなロングドレスのお二人が登場。
帰ってきたなという気持ちになります、山梨の硬めの桃がすっかりお気に入りという舞さん。あら私も「硬めの桃」派です♡

舞あいさつ


さて、今回はブラームスとシューマン夫妻にスポットを当てて演奏します、ドイツロマンの世界に浸ってください と侑奈さん。

1、ブラームス「6つの小品より『間奏曲』op118-2

ブラームスが晩年、クララ・シューマンに捧げたインテルメッツォ。当時ブラームスは61歳、クララは75歳。この作曲の数年後に二人とも相次いで天に召されました。
穏やかな旋律に、信頼し合っていた二人の心情を想いながら耳を傾けました。

※ 登場する三人の関係を解説

ヨハネス・ブラームス(1833〜1897)は無名だった二十歳の頃、ロベルト・シューマン(1810〜1856)に才能を見出されます。実力派ピアニストだったシューマンの妻クララ(1819〜1896)も彼を高く評価していました。
しかしシューマンは心を病み、ライン川に身投げし、救助されたものの療養所に収容され、二年後46歳で他界。恩師夫妻のため、ブラームスは献身的に14歳年上のクララと子供達を支えました。ブラームスとクララは生涯、音楽を通じて心からの愛情と絆で結ばれていたと言われています。

2、ブラームス 「F.A.E.ソナタより『スケルツォ』」

この曲はヴァイオリニスト・ヨアヒムの為にシューマン、ディートリッヒ、ブラームスにより作曲された曲で、3楽章のスケルツォはブラームスが担当。FAEとはヨアヒムのモットー frei aber einsam [自由に、しかし孤独に]の頭文字をとったもの。シューマンの発案で F-A-E (ファ、ラ、ミ)の音進行を織り込んだ主題を作曲するというものでした。
後に、ブラームスは自分のモットーを frei aber froh [自由にそして楽しく]とし、F-A-F (ファ、ラ、ファ)という音進行を用いるようになったそうです。凡人には考えつかない遊び心ですね。

スケルツォ冒頭はヴァイオリンの同音連打で始まり、それにピアノが続きます。速い短調の旋律は迸る熱い感情のよう。中間部はF-A-Eをモチーフにした美しい旋律、そして最後は黒雲が去ったように明るく長調の和声で終わります。

真剣

より真剣


3、ブラームス「ヴァイオリンソナタ第1番」ト長調 『雨の歌』op.78

オーストリア、ヴェルター湖畔の避暑地ペルチャハで夏を過ごしていたブラームス は、1879年クララに送った手紙で、病床にあったクララの末息子フェリックスを見舞いますが、フェリックスは若くして亡くなり、ブラームスは失意の中、ヴァイオリンソナタ第1番を完成させます。
詩人グロートの “雨が降ると素足になってはしゃいだ子どもの頃を懐かしむ” という詩がついた「雨の歌」は、かつてブラームスがクララの誕生日にプレゼントした歌曲でした。第3楽章冒頭のメロディに「雨の歌」をモチーフに取り入れたのは、悲しみにくれるクララを慰めようとしたのでしょうか。クララは天国の息子にこの曲を持っていきたいと述べるほど愛着を持っていたそうです。
歳を重ねるごとにこの曲の魅力に気づくようになったという舞さん、ピアノの音色は水の如く、ヴァイオリンの音色は森の如く…と清里の地にイメージを重ねてしっとりと演奏してくださいました。

休憩の後は、侑奈さんのピアノ独奏から。

4、ショパン 「バラード第2番 」へ長調 op.38

侑奈MC

1839年に完成、シューマンに献呈されましたが、シューマンは第1番の方を高く評価していたそうで…師匠は手厳しいですな。

ピアノ


ハ音(ド) ユニゾンの穏やかな讃美歌のような主題の後、突然豹変したかのような激しいイ短調が現れ、2つの対照的な曲想が進行。まるでジキルとハイドのよう。凪(なぎ)のような音、そして厳しい音を交互に紡ぐ侑奈さんのショパン、本当に素晴らしいと思いました。
(小林侑奈さんの演奏をもっと聴いてみたくなり、後で久々CD買いました〜(๑・̑◡・̑๑))

続いてはヴァイオリン名器ニコロ・アマティを抱えた舞さんが再び登場。

5、シューマン (アウアー編曲)「献呈」

ロベルト・シューマンとクララ二人の交際は、(かつてはロベルトの師匠だった)クララの父親フリードリッヒ・ヴィークの猛反対と執拗な妨害、法廷での泥沼闘争を乗り越え、1840年ついに結婚へと漕ぎ着けます。
その結婚式前日、妻となるクララに捧げた「ミルテの花」という歌曲が原曲の「献呈」。白い梅のような花ミルテは花嫁のブーケに使われる花で花言葉は「愛のささやき」。なんてロマンチックなエピソードでしょう♡
伸びやかな旋律がシューマンの歓喜と、心の底からのクララへの愛情を表しています。

髪なびかせ


6、クララ・シューマン「3つのロマンス」op.22

クララはスーパーウーマンだったと舞さん。
彼女は結婚後13年の間に八人の子どもを産み育て、自身のピアノ演奏で各地を飛び回って家計を支えていました。夫が曲作りしている時は妨げないよう自分のピアノ練習を控えたり、知名度が低く「クララの旦那さん」と屈辱的な扱いを受けていた夫ロベルトへの気遣いもありました。
(家事もこなすバリキャリ妻と、同じ業界人なのに冴えないオットという構図?)
クララ34歳、ロベルトの精神状態が悪化して入院する一年前に作曲された「3つのロマンス」。夫を案じる妻の不安な心情が見え隠れするようです。

7、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」

最後はヴァイオリン弾きの誰もが憧れるこの名曲で。
19世紀を代表するスペイン出身の名ヴァイオリニスト、パブロ・デ・サラサーテ(1844〜1908)作曲 「ツィゴイネルワイゼン」はロマの歌という意味。
ロマの人達は流浪の民として古くから迫害されてきました。ジプシー(英語)やツィゴイナー(ドイツ語)という呼称は、物乞いや盗人の代名詞のように使われ、差別用語として忌避されるようになりましたが、「私の物は私の物、みんなの物も私の物」持てる人から貰うのは当然(笑)という考え方は昔から変わらないのかもしれません。(旅行に行ったらスリにご用心)。
理不尽な差別への怒りや悲しみ、そして自然と共に生きる暮らしの中の風の音、鳥の声。活き活きとしたロマの音楽の特徴は、テンポや強弱の激しい変化や交代、大らかでエネルギッシュなヴォーカル。コード進行も独特な音階が多用されます。その音楽はバルトークやリスト、サラサーテなどクラシックの作曲家に多大な影響を与えました。

のけぞり

弓上


超絶技巧のこの難曲を華麗に弾く舞さんの姿に会場中のお客さんが目を凝らし、惚れ惚れと聴き入りました。

満場の拍手、ブラヴォーの声に応えて、アンコールは
ブラームス「ハンガリー舞曲 第5番」ヴァイオリンバージョン
憂いを含んだゆったりとした旋律、ぶんぶんと高速になるところ、この切り替えがなんともロマ音楽的。一杯ひっかけて踊り出さずにはいられない愉快な気分に🎶

今日の会場には目の不自由な方も来場していらっしゃいました。
その方が帰り際、楽しげに口ずさんでいらっしゃいました♬
美しい音楽は人生に彩りと、明日への希望を与えてくれますね。

お辞儀

称え合う


舞さん、侑奈さん、今年も素晴らしい演奏をありがとうございました。
またお目(耳)にかかる日を楽しみにしています。

森のスズコ







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<<鑑賞日記>> 極上の響きで愉しむケーナの世界~渡辺大輔 Quena WORLD~
2023 / 08 / 12 ( Sat )

八月に入り、清里の森も賑わってきました。
涼風祭第3回はケーナを中心に五人のアーティストをお迎えしました。

笛を片手にステージに現れた爽やかな風貌の渡辺大輔さんとピアノ 根木マリサさん。
ステージ真ん中にすっくと立って縦に笛を構える大輔さん。固唾を飲んで始めの一音を待つ聴衆。
と、朗々と会場に響く澄んだ音。おぉ…これがケーナの響きか…
一曲目は、南米ペルーで星に祈りを捧げる祭で演奏される曲「コユール」。コユールとは星を表すそうです。

ケーナは、インカ帝国の栄えた三千年の昔から、中央アンデス諸国 ペルー、ボリビア、エクアドル、アルゼンチン、チリ辺りで使われてきました。材料は竹。(動物の骨や葦、木でできた物もあるらしい。)
温暖な気候、湿潤な環境でよく育つ竹は日本や中国のみならずアンデスにも自生。それを切ってきて穴(七つ?)を開けただけの筒状のケーナ。管は両端とも開口していて上端の拭き口はU字型の切り込みが入っています。尺八に似てますね。

私、(食品の)竹輪に穴を開け、齧って長さを短くしながら音を奏でる人のオモシロ映像を観たことありますが、音が出る仕組みは同じかな?
シンプルな作りということは、つまり奏者の高い技量が要求され、熱量によって音色のクオリティが変わってくるということ。期待が高まります。

渡辺&熊本笑顔


続いてさらなるお仲間、パーカッション 熊本比呂志さん、ヴァイオリン菅野朝子さんも加わって、2曲目 は、知らない人はいない「コンドルは飛んでいく」。
三千年に一度きりのメガヒット曲 (笑)と大輔さん。世界最大級の鳥コンドルは、上昇気流に乗ってアンデスの険しい山並を舞い飛びます。

二胡以外


続いて、スタジオジブリ「もののけ姫」。映画の中で聴こえてくる笛の音は全てケーナなのだそう。耳を傾けていると、仄暗い森の奥深く、息を潜めて佇んでいるような感覚に。

ケーナのバックを支える三人の演奏者たちもピッタリ息があっています。
控えめながら万能選手の鍵盤ピアノ、抜群の安定感あるヴァイオリン、リズムきっちり、お洒落に鳴物を操るパーカス。管のケーナに加えて鍵盤、打楽、弦楽と、あらゆる奏法楽器が集結、音に厚みが出て奥行きのある美しいハーモニーが会場に響きます。

次は「踊りを体験しよう!」のコーナー。ちゃらら〜ん♪
ボリビアではクエッカと呼ばれる舞曲があり、6/8拍子のリズムに乗せて男女のペアが白いハンカチを振りながら踊るんだそう。ほろ酔いの観客達は手拍子で踊りを盛り上げます。
今日は大輔さん作曲「ラス・アラス」(翼という意味)の軽快なメロディにのって会場のお客さんも手拍子にチャレンジ。
チョット難しいヨと言われ皆真剣、大輔さんの足踏み合図にターンタ、ターンタ と手を打ちます。わ、楽しい🎶

みんな笑顔になったところで、二胡を抱えた今井美樹さん登場です。
(今井美樹さんって…同じ名前の歌い手さんがいましたね。)
まだ二胡が知られていなかった時代、美樹さんは不思議な箱型マシンガンを操る人と勘違いされたとか。
二胡は、中国の伝統的な擦弦楽器、2本の弦の間に挟んだ弓で弾きます。
琴筒はニシキヘビの皮、弓の毛は馬の尻尾。トルコ、イスラム辺りが発祥地、シルクロードを東に伝ってきたのが二胡、西へ伝わったのがヴァイオリンなどの弦楽器、ルーツは同じらしい。

二胡&ピアノ


ケーナ、ピアノと共に2000年初頭のヒット曲「燕になりたい」を演奏、哀愁を帯びた独特の音色に会場皆が聴き入ります。
あの人を追いかけて、燕のようにまっすぐに翔んでいきたい…帰ってこない人を想う切ない気持ちがヒシヒシと胸に迫ってきました。

続いてはフルメンバーで、昔NHK特集で放送され耳に馴染みのある「シルクロードのテーマ」
大輔少年の心の音楽の扉を開いたという喜多郎さんの原曲は、シンセサイザーによるもの。ステージの演奏に耳を傾けながら、私は平山画伯が描いた砂漠を行くラクダの隊列の絵を思い出していました。

左4人

ヴァイオリン


従姉妹みたいな関係の、2本弦の二胡と4本弦のヴァイオリン。ヴィブラートをかけたときの艶っぽい音色はやっぱりどこか似ています。
ヴァイオリン菅野朝子さん、ケーナの三度下を弾き音に厚みを持たせたかと思うと、美しいメインメロディを奏でたり、いつも落ち着いて頼りになるお姉さんみたいな存在感がありました。

特筆すべきはパーカッション熊本比呂志さん。打つ、擦る、振る、八面六臂の大活躍。ここぞというところでピリッと効いた音。決してブレないリズム。縁の下に徹して、さりげないところが尚更カッコよくて素敵です。

ケーナ&ドラム演奏


前半最後は「碧の楽園」
大輔さんは開演前にプチ散歩、音楽堂前の池のほとりから北にそびえる赤岳が見えてテンション上がったそう。山登りもするという大輔さんが作曲した「碧の楽園」は八ヶ岳ブルーと言われる澄み切った空の青、山の尾根に咲く可憐な花々を想起させてくれました。

休憩挟んで、後半もピアノ&ケーナのデュオで始まりました。

ケーナ&ピアノ


三拍子の「シエリト・リンド」はメキシコの国民ソング。同郷の人々が集まると賑やかに歌って盛り上がるらしい。
(ルーツが長野県の私は「信濃の国」で盛り上がります、そんな感じ?)

デュオ2曲目は、 ピアフのシャンソン「巴里の空の下」。アコーディオンやハーモニカで演奏される曲を、ケーナで。途中からピアノがメロディラインを奏でます♪
ジャズピアニスト根木マリサさんは背中の開いたドレス姿で(私から見ると殆ど後ろ姿なんだけど)、鍵盤タッチはクールかつハンサム 。この方のガンガン弾くジャズ、いつか聴いてみたいな♡

ピアノ


続いては、「アンデスの音楽を勉強しましょう」コーナー 。キンコンカンコーン🎶
過去3000年から500年程前まで、五穀豊穣を祈る祭祀に使われる笛や太鼓はピーヒャラピーヒャラ、ドンドーン とドレミファ以前の音でした。


大輔さん、チョケーラという縦笛の音色を披露してくれました。(この土着っぽい音も味わいあるなぁ。)
スペインの大航海時代以降、社会・文化の変容と共に西洋音階が取り入れられ、よって楽曲のレパートリーもぐんと拡がったわけですね。

渡辺MC


ここで、アンデス地方の民族音楽フォルクローレに欠かせない楽器を一つ紹介しましょう!と、おともだち登場。
サンポーニャ(現地語ではシーク)の達人、石原慎矢さん です。

サンポーニャ


サンポーニャは、一つの管が一つの高さの音しか出せないので長さの異なる管を束ねた形状。かつては(ドミソ村とレファラ村に例えて)異なる音程を別々に分担してハンドベルの如く各人が交互に 奏でる楽器でしたが、近頃は二つの楽器を重ねて持ち全部の音を一人で出すようになったとか。
「リャキルナ」 ケチュア語で悲しい人という意味、鉱山で働く少年の悲哀を歌ったボリビアの伝承曲をステージ六人全員で演奏。
サンポーニャ。砂と土の広大な大地を吹き抜ける風のような音に聴こえました。慎矢さん、友情出演ありがとうございました。

続いての風景は日本に移動して、茨城県出身の大輔さんオリジナル曲。
冬に山から冷たい風が吹き降りてくる筑波おろしから想起した「木枯らし 〜風の詩(うた)〜」
かじかむ指先、冷たい耳たぶ、白い息…大輔少年の冬は寒かったんだろうなぁ。

最後に、ケーナ・ワールドとは何なのか?というお話を。
18歳の春、「リャキルナ」に聴き惚れた大輔さん。当時は楽器の正体も知らずただ憧れていたけれど、ケーナという武器を手に入れてから、頭の中のイメージをアウトプットできるようになったそうです。
大輔さんのこよなく愛するケーナで表現する音楽世界が、ケーナ・ワールドなんですね。音色が美しく、音域が広く、多彩な表現力をもつケーナというスーパーシンプルな笛だからこそ、国境を超えて世界中いえ宇宙中の音楽を奏でることができるのだと思いました。

X JAPAN のYOSHIKIさんのファンだという大輔さんの選んだ〆は
「Forever Love 」ケーナバージョン。
人生紆余曲折、いろいろあるけど希望を胸にゆっくりでも歩んでいこうよ…そんなメッセージを感じました。

5人演奏

アンコールは、ハンマーダルシマー奏者 小松崎健作曲の「3月はマーチ」🎶
草木が一斉に芽吹く春の陽光を浴びたよう、元気が出ました!

熱い拍手に応えて、さらなるアンコールは大輔さんオリジナル曲「トワイライト」。
地平線の彼方に太陽が沈んだ後の静かな黄昏時。また明日ね、と友と別れる気持ちを表現したそうです。

渡辺大輔さん、ケーナワールドお仲間の皆さん、楽しく素晴らしいステージをありがとうございました。

幸せな気分に包まれて、わたし達もまた今度ねと手をふって別れたのでした。

森のスズコ
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<<鑑賞日記>> 高原の風に乗せて! チェロ藤村俊介・ピアノ遠藤さつき
2023 / 08 / 04 ( Fri )

ふたたび、「森のスズコさん」の熱い鑑賞日記です。

~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~


涼風祭2日目は趣向変わって音楽を。
お迎えするのは、多彩な演奏活動、後進の指導もしていらっしゃる チェリスト藤村俊介さんとピアニスト遠藤さつきさんです。

この日、嬉しい飛び入り参加がありました。
師匠の遠藤さんを追いかけて広島からやってきたコーラスグループ「若葉会エレガンス」女性8人が、開演前ステージに並んで歌声を披露してくださいました。
広島県の作曲家 坊田かずまの作品「こぐまのおすもう」「おけやさん」「狐の嫁入り」「追羽根小羽根」。小学一年のお嬢さんも愛らしい浴衣姿で参加して母娘で「蛍」。続いて「蛍こい」「とうせんぼ」。
最後に会場の皆も一緒に中田喜直作曲「夏の思い出」を歌いました🎶

ほんわかした雰囲気に包まれた会場…
開演のベルが鳴り、本日のゲストお二人が登場しました。
舞台前方には台形の箱?が設置され、そこに立った長身の藤村俊介さん、にこやかに「お立ち台」の解説を。

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音楽堂、以前は冷房が無くステージ真ん中は強い照明もあり暑かった。そこで迫り出しを考案、そこに座って弾くようにしたと。若干のグラグラはバランス感覚でカバー(笑)
皆さんのお近くで弾きたいと仰り、会場がますますリラックスしたところで演奏が始まりました。
笑顔の素敵な遠藤さつきさんはピアノ鍵盤の前が定位置です。

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1、フレスコバルディ作曲 ガスパール・カサド編曲 「トッカータ」
ジローラモ・フレスコバルディはイタリアの初期バロック音楽の作曲家、オルガンやチェンバロのための作品を多く残しています。
ガスパール・カサドはスペイン出身の世界的チェリスト。カザルスの薫陶を受け、後に日本人ピアニスト原智恵子さんと結婚したことでも知られています。

若き日にフィレンツェのカサド邸を訪ねた俊介さん、そこで供された果物のチップが入ったお洒落なアイスクリームが、ひと夏の想い出として忘れられないそうです。アイスクリームの如く滑らかな旋律、フルーツチップの如く軽快な響き。私たちも五感を開いて聴きましょう。

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2、エルガー「愛の挨拶」
優美な小品、男性の声に近いチェロの音色にアナタは誰を想うでしょう…

3、サン・サーンス「白鳥」
チェロといえば断然コレ、悠然と湖面をゆく白鳥。ピアノは水面の微かな小波のよう。

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4、バッハ「G線上のアリア」
「G線上のアリア」は、「管弦楽組曲第3番」第2曲のアリアのことで、ヴァイオリンのG線(いちばん低音の太い弦)で弾けるようにアレンジされたためこの名称になりました。聴く度に心が震え祈りたくなる。

5、バッハ「無伴奏チェロ組曲」第1番より、プレリュード、メヌエット、ジーグ
冒頭楽章で朗々と響く開放弦による分散和音が印象に残ります。
ぼ〜ん、ぶ〜んと太く低い音が余韻を残し、その上に重なる音、音、音。佇まいの整った和音が心地よい。

6、黛敏郎「無伴奏チェロのための『文楽』」
戦後日本のクラシック・現代音楽界を代表する黛敏郎が義太夫節を基に作曲した「文楽」。俊介さん、ご自分が弾くからには、まず人形浄瑠璃を鑑賞しようと初めて文楽のチケットを買い、最前列右の「床」と呼ばれる演奏者に近い所で鑑賞なさったそう。

※ 義太夫節とは世界文化遺産にも登録されている人形浄瑠璃文楽の音楽です。声を担当する「太夫」と三味線弾きが対になってドラマを語りあげます。棹が太く重い胴、厚みのある撥に特色があり、ダイナミックな迫力ある響きが心を打ちます。

太棹三味線の力強い撥捌きのようにベンベンと叩くような奏法もあれば、微妙な部分は通常とは逆の左の指で弦を引っ掛けるピチカートで。悲運のお姫様が登場する場面は、指をずらしてポルタメントでなよなよと艶っぽく。あるいは邦楽らしく尺八を想起させる雑味のあるかすれた音で。情念を表すべく指板と駒の間の弓の置き方を変え…と幾多の奏法(=超絶技巧)をご自分なりに工夫したことを、実に愉しそうに弾きながら解説してくださいました。
たった一本のチェロが日本の伝統芸能の世界を表現する、これは古典なのか前衛なのか。実に刺激的でありました。またじっくり聴いてみたい。

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~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~

休憩挟んで後半は、遠藤さつきさんのピアノ独奏から始まりました。
かつてはアンノン族でした〜と仰るさつきさん、昔も今も小鳥の声を聴きながら朝の爽やかな清里高原を歩くのがお好き♡

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7、ショパン「前奏曲17番」
変イ長調 allegretto
穏やかで柔らかな響き、波のように寄せては引く左手の三連符。静かな心持ちで耳を傾けました。

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「子犬のワルツ」
元気に飛び跳ねるやんちゃなワンコ。 森の朝は散歩するワンちゃんも人間も活き活きしてますね🎶


ここからは、チェロを持った俊介さんが再び登場。

8、カッチーニ「アヴェ・マリア」

シューベルトの「アヴェ・マリア」、グノーの「アヴェ・マリア」と並ぶ三大アヴェ・マリアの一曲として親しまれてきたが、真の作曲者は旧ソ連のウラディーミル・ヴァヴィロフと判っています。なぜカッチーニの曲とされたかは諸説あり。
深い悲しみの中にあるとき、ひとりで祈るとき…癒される調べ。

続いて、懐かしい映画音楽をたっぷり聴かせていただきました。

9、「ティファニーで朝食を」より『ムーン・リバー』
10、「シェルブールの雨傘』より『シェルブールの雨傘』
11、「ノッティングヒルの恋人」より『She』

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「映画を観ないで弾くのは後ろめたいから、ちゃんと観ました」と俊介さん。演奏する曲を理解するためにきちんと勉強する。文楽も然り。演奏家として当たり前のことなんだろうけれど、ますます好感度UPです。

12、ポンセ「エストレリータ」
マヌエル・ポンセは、19世紀後半メキシコに生まれた作曲家・ピアニスト。「エストレリータ(小さな星)」はヴァイオリン奏者ハイフェッツによる編曲で有名になりました。
甘い甘い歌詞があるのです。
「エストレリータ 暗い夜空に 私の苦しみを見つめて光る星
降りてきて私に伝えて 彼の気持ちを 彼なしでは私 生きられないの」
…涙腺が緩んじゃう。弦楽の調べはひしひしとハートに迫ってくるのでした。
(拍手拍手)

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最後に
俊介さんがチェロの道に進むきっかけになった中学2年の夏を語ってくれました。

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小さい頃から厳しいお稽古に耐えてきたけれど、軽井沢プリンスホテルで弦楽合奏に参加してとっても楽しかったと。ヴァイオリンの女の子に胸キュン♡したりして。
…ということで、アンコールは本日2度目の「夏の思い出」。会場の皆も歌いました。

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俊介さん、さつきさん、また高原の音楽堂へいらしてください。
皆さんも、どうぞ素敵な夏の思い出を。

森のスズコ
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