涼風祭 追記メッセージ by 森のスズコ (8月24日記)
2021 / 09 / 04 ( Sat ) 八ヶ岳山麓は感染症から遠く安全地帯かと思いきや、世の中そんなに甘くなかった。突然の中止の連絡に呆然としています。 前年ほぼ皆勤で楽しませて頂いたのに、今年私は2回拝聴しただけでした。お洒落なジャズも聴きたかったしカッコいい三味線や素敵なピアノも心待ちにしてたのに…。 お客さん以上に落涙しているのはきっと出演者の方々。それから苦労してここまで繋いできてくださった実行委員の方々、ボランティアの方々も。雨ばかりの夏でした、きっとみんなの涙雨。 次の夏、涼風の吹く清里の音楽堂で皆さまと再会できますことを心から願っています。それまでどうぞお元気で。ごきげんよう 森のスズコ くちびるには歌を、心には太陽を。 |
≪鑑賞日記≫ 8月8日 フランス音楽のエスプリ 鈴木舞(Vn.)・小林侑奈(Pf.)
2021 / 09 / 04 ( Sat ) 今年も、最強ペアのお二人が森の音楽堂にいらしてくださいました。ヴァイオリニスト鈴木舞さんは淡いピンクのドレスを纏って西洋人形のような愛らしさ、(楽器は名工ストラディバリウスの師匠だったニコロ・アマティ1683年製!) ピアニスト小林侑奈さんは銀と黒のすらりとしたお姿、期待に胸が高まります。 ![]() 今回はフランス音楽のエスプリと題し、お洒落なパリの雰囲気を味わう趣向。19世紀後半の作曲家フォーレ「ロマンス」が始まると、甘く軽やかなメロディに浮世の憂さは飛び去り、苺ミルク色の多幸感に包まれました。 ![]() フォーレ二曲目は初演から大絶賛されたという「ヴァイオリンソナタ第一番」。 幸せいっぱいの初恋を思い出しながら聴いてくださいと舞さん。 ![]() 一楽章、恋の炎はちらちらと燃え始め…続く二楽章は哀しげな長いレガートに不安と安堵を行きつ戻りつ。アップテンポの三楽章は、恋人同士が肩を寄せ合い笑いさざめいているかの如く。激しく迸る美しい旋律の最終楽章には心揺さぶられ…過ぎし日々を想い浮かべていたワタシでした。 ![]() 次なる曲はフォーレの師匠だったサン・サーンスによる「死の舞踏」。 ペストが大流行し、死が身近にあった中世ヨーロッパ、絵画や壁画のテーマとして死の普遍性が描かれた。王様だろうが農民だろうが、ある日訪れる死によって無となるという死生観。 音楽ではサン・サーンスの交響詩が有名でシロフォンによる骨のカチカチと鳴る箇所が印象に残る曲だが、これをヴァイオリンとピアノに編曲。夜明けのコーケコッコー、コーという鶏の声が聴こえると、骸骨達は雲散霧消したのでした… ![]() 後半は侑奈さん独奏によるショパン「ノクターン」op.62-1で始まりました。 ![]() 全21曲あるショパン夜想曲の17番めは晩年36歳に作曲されたもの。パリで活躍し儚い夢のような生涯を送った作曲家を偲びながら耳を傾けました。 私の瞼に、フランス印象派の画家モネの絵が浮かんできました。朝靄の光に染まる空と海。オレンジ色の陽の光が水面に揺らいでいます。旋律から様々な色や形が瞼に浮かんでは消え… 優れたピアノ奏者の力量を感じました。 ![]() 最後の2曲はラヴェル。 「ヴァイオリンソナタ第2番」は1927年に作曲されたラヴェル最後の室内楽作品。第ニ楽章「ブルース」には第一次世界大戦後にパリの若手知識人を魅了したジャズの影響が。冒頭重音ピチカートはバンジョーの様。そして息つく暇なく疾走する三楽章!ピアノに置いた楽譜が時折風に煽られめくれそうになるのを手でバッと直しながら鍵盤をガンガン弾き続ける侑奈さんも凄くて目が釘付けに。うーん、曲も奏者もカッコよくて痺れた〜 ![]() ラヴェル「ツィガーヌ」。 フランス語でジプシー(=ロマ)を意味するツィガーヌ。流浪の民の哀しみを朗々と歌うヴァイオリンに、やがてピアノが加わり、音を交叉させながら徐々にテンポアップ。随所に鳥の声や風の音が混じります。エキゾチックな音色、魔法でも使ってるかのような超絶技巧の連続に息を呑みました。 ![]() アンコールは、フォーレ「シシリエンヌ」耳に馴染みのメロディでしっとり終わりました。 ![]() コロナ禍にはるばる森へいらしてくださり、最高に素敵な時間をありがとうございました。技も笑顔もピカピカの若いお二人をこれからも応援しています。 森のスズコ |
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