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≪鑑賞日記≫ 齊藤一也ピアノリサイタル
2020 / 09 / 01 ( Tue )

8月23日 ようやく秋の気配が感じられるこの頃、ススキを眺めながら音楽堂へ。先程までぱらついていた雨もあがり、爽やかな空気が吹き抜けます。
今日はallピアノのプログラム。新進気鋭のピアニスト齊藤一也さんをお迎えするとのことで、空席待ちの満員御礼。気合いを入れて列に並び、ピアノの鍵盤がよく見える席に着きました。

グランドピアノが照明を絞った薄暗いステージに鎮座、齊藤さんが静かに着席しました。
オープニングはJ.S.バッハ作曲 エゴン・ペトリ編曲「羊は安らかに草を食み」(カンタータ「狩こそ我が悦び」より)。バッハが生まれる少し前、ドイツでは戦争やペストの厄災で人口が激減し、人々の信仰心がより深まったそうです。今の世界と似ているかもしれません。
乾いた土に水が滲みこんでいくように、私の心にも澄んだ音が滲みてきました。

70_バッハ


マイクを持って立ち上がった齊藤さん「今日はライブ配信のお客様もいらっしゃいますね、皆でカメラに手を振りましょう、コンニチワ〜」と(意外にも?)サービス精神バッチリ。
演奏会のサブテーマは「自然と巡る名曲ロマン紀行 〜清里の風にのせて」
高原の空に浮かぶ雲やそよぐ風を感じとり、涼風祭に相応しい曲を選んでくださいました。

71_説明


ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番 かっこう ト長調作品79」
1楽章にはカッコーカッコーと元気よく鳴くかっこうの声が。2楽章は仄暗い闇の中からフクロウの声が。3楽章、再び陽が昇り、飛び交う小鳥や蜜蜂の羽音が。聴こえました!

シューベルト 「即興曲 作品90より 第2番 変ホ長調」
齊藤さんのイメージは風。サラサラと吹き抜ける心地良い風。雲ゆきが怪しくなり鳴り出す遠雷。
私はこの曲を聴くとなぜか懐かしさと切なさが混じった少女時代 を思い出します。

次なる曲は、リスト 「巡礼の年 第一年 スイス」より
「第2曲 ヴァレンシュタットの湖で」
「第4曲 泉のほとりで」
ステージの後ろの壁に、スイスで撮ったという美しい映像が現れました。行ってみたいなぁ…

72_湖


続く二曲は鐘の音色の聴き比べです。
「巡礼の年 第9曲 ジュネーヴの鐘」 は、子どもが生まれた悦びや感謝の気持ちが静謐な中に感じられる一曲。鍵盤を打つタッチが気品に満ちていました。

73_丘の教会


「ラ・カンパネッラ(パガニーニの主題による大練習曲 S.141より第3曲)」
街中の教会の鐘が12時になると一斉に鳴り出し、響き渡る様々な音色に包まれて不思議な気持ちになる と齊藤さん。教会の広場に佇む若い音楽家の姿を思い浮かべました。
透明感あふれる美しいラ・カンパネッラ。会場に居るお客さん全員が身動ぎもせず聴き入っているのを感じました。誰もが、素晴らしい演奏を間近で聴ける幸せを噛みしめていたことでしょう。

74_街の教会


休憩挟んで後半、ラフな黒シャツに着替えた齊藤さんがピアノに座ります。
ショパン「幻想即興曲 作品66 嬰ハ短調」
鍵盤の上を華麗に舞うように長い指が行き来し、光の粒のような音色がコロコロと弾けていました。聴いて美しいだけじゃなく眺めも美しく、演奏者の手にうっとり。

75_ショパン


最後は、ショパン「24の前奏曲 作品28」
これらは24枚のスライド映像に加え、「ボク(演奏者である一也さん)の思うタイトル」付きでした。勿論、作品から受け取るイメージや感じ方は人それぞれ自由なのですが、この映像とタイトルは一つ一つの短い曲の構想をより鮮明にしてくれました。
自分の繊細な心の内面を旋律に表しても、派手な名前をつけることはしなかったショパンは、リストと違ってシャイだったのでは という解説には目から鱗、納得しました。
唯一タイトルが付いていたのが15番「雨だれ」だそうです。

以下、一也さんの付けたネーミングを番号順にメモしました。
1番 出会い。2番 孤独と不安。3番 清流沿いの風。4番 葬送。5番 妖精たちのお喋り。6番 哀愁のチェロ。7番 寛ぎのひととき。8番 吹雪の中、荒れ狂う心。9番 賢者は語りき。10番 スカルボ。11番 甘酸っぱい思い出。12番 火祭りの踊り。13番 祈りの晩鐘。14番 墓を吹き抜ける幻影。15番 雨だれ、そして死の予感。16番 激昂。17番 牧歌。18番 罪と罰。19番 蝶々。20番 レクイエム。21番 望郷、果たせぬ想い。22番 反逆者たち。23番 木々のざわめき。24番 革命とワルシャワ陥落。

77_1出会い

77_5妖精

77_13祈り

77_16激昂

最後の24番は、当時ロシアに支配されていたポーランドの苦しい情勢が色濃く映り、人々の絶望と叫びが伝わってくるような激しさがありました。止まない戦争、襲いくる病、死と隣り合わせの時代だったからこそ、自然の美しさと生命の尊さが燦然と光り輝いていたのではないか、自然の持つピュアな美しさに誰よりも敏感だった音楽家たちが、時代を超えて音を紡いできたのだと思いました。
作曲家が音を練り、演奏者が作曲家の想いを再現する。私達はその珠玉の時間を享受することができました。

アンコールは、ショパンのノクターン、子犬のワルツに続き、贅沢にも3曲目が。
ニャンと、子犬のワルツ 猫アレンジバージョン。誰でも一度は鍵盤で遊ぶ「ネコ踏んじゃった」が華麗なネコワルツに変身♪

猫好きな?ピアニストに出会えてとっても嬉しいスズコでした。ありがとうございました。
(森のスズコ)
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