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<<鑑賞日記>> 高原の風に乗せて! チェロ藤村俊介・ピアノ遠藤さつき
2023 / 08 / 04 ( Fri )

ふたたび、「森のスズコさん」の熱い鑑賞日記です。

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涼風祭2日目は趣向変わって音楽を。
お迎えするのは、多彩な演奏活動、後進の指導もしていらっしゃる チェリスト藤村俊介さんとピアニスト遠藤さつきさんです。

この日、嬉しい飛び入り参加がありました。
師匠の遠藤さんを追いかけて広島からやってきたコーラスグループ「若葉会エレガンス」女性8人が、開演前ステージに並んで歌声を披露してくださいました。
広島県の作曲家 坊田かずまの作品「こぐまのおすもう」「おけやさん」「狐の嫁入り」「追羽根小羽根」。小学一年のお嬢さんも愛らしい浴衣姿で参加して母娘で「蛍」。続いて「蛍こい」「とうせんぼ」。
最後に会場の皆も一緒に中田喜直作曲「夏の思い出」を歌いました🎶

ほんわかした雰囲気に包まれた会場…
開演のベルが鳴り、本日のゲストお二人が登場しました。
舞台前方には台形の箱?が設置され、そこに立った長身の藤村俊介さん、にこやかに「お立ち台」の解説を。

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音楽堂、以前は冷房が無くステージ真ん中は強い照明もあり暑かった。そこで迫り出しを考案、そこに座って弾くようにしたと。若干のグラグラはバランス感覚でカバー(笑)
皆さんのお近くで弾きたいと仰り、会場がますますリラックスしたところで演奏が始まりました。
笑顔の素敵な遠藤さつきさんはピアノ鍵盤の前が定位置です。

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1、フレスコバルディ作曲 ガスパール・カサド編曲 「トッカータ」
ジローラモ・フレスコバルディはイタリアの初期バロック音楽の作曲家、オルガンやチェンバロのための作品を多く残しています。
ガスパール・カサドはスペイン出身の世界的チェリスト。カザルスの薫陶を受け、後に日本人ピアニスト原智恵子さんと結婚したことでも知られています。

若き日にフィレンツェのカサド邸を訪ねた俊介さん、そこで供された果物のチップが入ったお洒落なアイスクリームが、ひと夏の想い出として忘れられないそうです。アイスクリームの如く滑らかな旋律、フルーツチップの如く軽快な響き。私たちも五感を開いて聴きましょう。

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2、エルガー「愛の挨拶」
優美な小品、男性の声に近いチェロの音色にアナタは誰を想うでしょう…

3、サン・サーンス「白鳥」
チェロといえば断然コレ、悠然と湖面をゆく白鳥。ピアノは水面の微かな小波のよう。

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4、バッハ「G線上のアリア」
「G線上のアリア」は、「管弦楽組曲第3番」第2曲のアリアのことで、ヴァイオリンのG線(いちばん低音の太い弦)で弾けるようにアレンジされたためこの名称になりました。聴く度に心が震え祈りたくなる。

5、バッハ「無伴奏チェロ組曲」第1番より、プレリュード、メヌエット、ジーグ
冒頭楽章で朗々と響く開放弦による分散和音が印象に残ります。
ぼ〜ん、ぶ〜んと太く低い音が余韻を残し、その上に重なる音、音、音。佇まいの整った和音が心地よい。

6、黛敏郎「無伴奏チェロのための『文楽』」
戦後日本のクラシック・現代音楽界を代表する黛敏郎が義太夫節を基に作曲した「文楽」。俊介さん、ご自分が弾くからには、まず人形浄瑠璃を鑑賞しようと初めて文楽のチケットを買い、最前列右の「床」と呼ばれる演奏者に近い所で鑑賞なさったそう。

※ 義太夫節とは世界文化遺産にも登録されている人形浄瑠璃文楽の音楽です。声を担当する「太夫」と三味線弾きが対になってドラマを語りあげます。棹が太く重い胴、厚みのある撥に特色があり、ダイナミックな迫力ある響きが心を打ちます。

太棹三味線の力強い撥捌きのようにベンベンと叩くような奏法もあれば、微妙な部分は通常とは逆の左の指で弦を引っ掛けるピチカートで。悲運のお姫様が登場する場面は、指をずらしてポルタメントでなよなよと艶っぽく。あるいは邦楽らしく尺八を想起させる雑味のあるかすれた音で。情念を表すべく指板と駒の間の弓の置き方を変え…と幾多の奏法(=超絶技巧)をご自分なりに工夫したことを、実に愉しそうに弾きながら解説してくださいました。
たった一本のチェロが日本の伝統芸能の世界を表現する、これは古典なのか前衛なのか。実に刺激的でありました。またじっくり聴いてみたい。

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休憩挟んで後半は、遠藤さつきさんのピアノ独奏から始まりました。
かつてはアンノン族でした〜と仰るさつきさん、昔も今も小鳥の声を聴きながら朝の爽やかな清里高原を歩くのがお好き♡

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7、ショパン「前奏曲17番」
変イ長調 allegretto
穏やかで柔らかな響き、波のように寄せては引く左手の三連符。静かな心持ちで耳を傾けました。

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「子犬のワルツ」
元気に飛び跳ねるやんちゃなワンコ。 森の朝は散歩するワンちゃんも人間も活き活きしてますね🎶


ここからは、チェロを持った俊介さんが再び登場。

8、カッチーニ「アヴェ・マリア」

シューベルトの「アヴェ・マリア」、グノーの「アヴェ・マリア」と並ぶ三大アヴェ・マリアの一曲として親しまれてきたが、真の作曲者は旧ソ連のウラディーミル・ヴァヴィロフと判っています。なぜカッチーニの曲とされたかは諸説あり。
深い悲しみの中にあるとき、ひとりで祈るとき…癒される調べ。

続いて、懐かしい映画音楽をたっぷり聴かせていただきました。

9、「ティファニーで朝食を」より『ムーン・リバー』
10、「シェルブールの雨傘』より『シェルブールの雨傘』
11、「ノッティングヒルの恋人」より『She』

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「映画を観ないで弾くのは後ろめたいから、ちゃんと観ました」と俊介さん。演奏する曲を理解するためにきちんと勉強する。文楽も然り。演奏家として当たり前のことなんだろうけれど、ますます好感度UPです。

12、ポンセ「エストレリータ」
マヌエル・ポンセは、19世紀後半メキシコに生まれた作曲家・ピアニスト。「エストレリータ(小さな星)」はヴァイオリン奏者ハイフェッツによる編曲で有名になりました。
甘い甘い歌詞があるのです。
「エストレリータ 暗い夜空に 私の苦しみを見つめて光る星
降りてきて私に伝えて 彼の気持ちを 彼なしでは私 生きられないの」
…涙腺が緩んじゃう。弦楽の調べはひしひしとハートに迫ってくるのでした。
(拍手拍手)

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最後に
俊介さんがチェロの道に進むきっかけになった中学2年の夏を語ってくれました。

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小さい頃から厳しいお稽古に耐えてきたけれど、軽井沢プリンスホテルで弦楽合奏に参加してとっても楽しかったと。ヴァイオリンの女の子に胸キュン♡したりして。
…ということで、アンコールは本日2度目の「夏の思い出」。会場の皆も歌いました。

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俊介さん、さつきさん、また高原の音楽堂へいらしてください。
皆さんも、どうぞ素敵な夏の思い出を。

森のスズコ
12 : 28 : 37 | 感想文 | コメント(0) | page top
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