<<鑑賞日記>>津軽三味線&和太鼓演奏会 -力音-
2023 / 08 / 24 ( Thu ) 涼風祭もいよいよ後半、本日は津軽三味線名手 山中信人さんと、和太鼓奏者 鷹-TAKA-さん、塚本準也さんをお迎えします。 昼は大変な土砂降りでしたが、開演ベルが鳴る頃には雨は小降りとなり、チラシが足りなくなりそうなほどの満員御礼状態。 前半(第一部)は、山中信人さんの独演です。 「津軽あいや節」 舞台に立てかけて並んでいた三味線の真ん中の一本を手に取って、演奏が始まりました。始まりは静かに、次第にべべべべべ〜ンとロックな世界に引き込まれていきました。 私は何処か異国のバザールの雑踏の中にいるような気分に。三味線は15〜16世紀、戦国時代に琉球から伝来、比較的新しい楽器だそうで、楽器分類上はギターやシタールと同じリュート属だとか。だからなの?異国情緒を感じた私でした。 ![]() 信人さん「昨今色々なものが無くなってきましたが、犬の皮を張って作る津軽三味線も、動物愛護という観点から人口の革が使われるようになってきました」と。なんと先程の演奏楽器は、人口の革、プラスチックの撥(バチ)によるものでした。素人の耳にその違いは全く判らず。 ちなみに、津軽三味線と他の三味線の違いは大きさ。棹が太く胴も大きめの三味線は津軽の調べや、浪曲、義太夫などに使われ、津軽民謡を演奏するものを津軽三味線と呼びます。胴には力強い叩き撥に対応できるように頑丈な厚い皮がしっかり張られています。 あぁ、だから太棹は犬の革で、細棹、中棹は猫なのですね… 弦はたった三本。(ネットの解説によると)覚えやすくするために太い順に開放弦をドン、トン、テン、とか、バチですくうとロン、とか口伝で覚えるそうだ。うむ、麻雀のような。 ![]() 続く「津軽小原節」は、伝統的な材料による楽器、犬の革、象牙の糸巻、ベッコウの撥で。「生命をいただいていますから、腕を磨いて命をかけて弾きます」と信人さん。 湿気の多い日は弾きにくいそうですが、どっこい流石パーフェクトな演奏ぶりでありました。 ※ベッコウ(鼈甲)は、熱帯に棲むウミガメの一種、タイマイの甲羅の加工品。絶滅危惧の野生動植物を守るためのワシントン条約により、商業取引が禁止されています。同様に、アフリカゾウの牙も厳正に管理されるようになりました。 さて、 信人さんには東京と清里でお世話になっているご夫妻がいらっしゃいました。知る人ぞ知る森の俳人T氏は六月に急逝なさり、今日はT氏を偲んでの演奏を と、T夫人から贈られたという銀鼠色の浴衣を身に纏い、舞台に上がられました。 信人さん、T氏の遺した句を一つご紹介「旅立ちは ここ 郭公の鳴くところ」。 満天の星、月が美しい清里の夜空を想いながら「荒城の月」 続いて、亡くなった大切な方の旅立ちを願って「恐山へ」。 清里の地を愛して旅立たれたT氏の魂、今日は蜻蛉かクワガタに姿を変えて帰っていらして、私達を見守ってくださっているのかもしれません。 今は安らかな天の高原にきっといらっしゃると、私も思えてなりません。 一部最後の演奏は「津軽じょんがら節」 信人さんのお祖父様からおばさまに託された価値ある立派なお三味線、それを十六人いる孫の中から信人さんが譲り受けたそうです。その由緒ある楽器と、海外公演で鼈甲の撥を持っていくのは今は難しいということで、プラスチックの撥での熱演、ライトに反射して撥がキラキラと金色に輝いて見えました。 休憩挟んで第二部は、幕の向こうの大太鼓の音から始まりました。 「阿修羅」 ズン…ズン…という地響きのような音に鳥肌が立ちます。 大太鼓の前に仁王立ちしているのは、鷹-TAKA-さん。小太鼓を持って現れたのは、塚本準也さん。兄弟であるお二人の「ヤッ」「ハッ」という掛け声と力強い音が会場に響きます。 ![]() 「屋台囃子」 子供の頃太鼓を叩いていた妹曰く、あれは秩父屋台。 山中師匠も登場して三味線を弾いたかと思うとドラム似の太鼓も叩き、賑やかに。床に座った準也さんは横にした太鼓を両足で挟み込むようにして叩きます。ドコドコドコンコ、ドコドコドコンコ… ![]() 「十三の砂山」 MC無しで演目が進みますヨと信人さんが仰ったとおり、ジャズのセッションの如く黙々と熱演が続き、ワタシには何処から何処までがこの曲なのか見分けがつかず…(^◇^;) 🎶 ![]() 「打弾」 斜めがけにした大きな太鼓を右手は右側を、左手は左側に加え右側も、高速で交互に打ちまくる準也さん。あれっ、3年前もこのパフォーマンスを目撃してビックリ仰天したのです。左腕の描く軌跡がX(エックス)に視えるんだから! 握った撥が汗ですっ飛ぶことは無いのですか?と公演後、準也さんに愚かな質問をしたワタシでしたが、トレーニングしているから、そんな事態にはならないそうです。恐れ入りました。 ![]() 「大太鼓」 待ってました!鷹-TAKA-さんの出番です。 先月、富士山大太鼓祭りで見事日本一に輝いた鷹さん。 自分の身体より遥かに大きい太鼓に向かって祈りを捧げるかのように立ち、敬うように、慈しむように、一打一打に魂が込められていきます。 その形はギリシャ戦士が弓を弾くポーズの様であったり、怒髪天を衝く仁王様のようであったり。鍛え上げた身体の造形美にも魅せられました。 ![]() 「風林火山」 舞台袖からスーッと山中師匠が入ってきて、「シュッ」という合図で次の演奏が始まりました。 風のように素早く動き、林のように静かに構え、火の如く激しく攻め奪い、山のようにどっしりと構えて動かない。文字通りの風林火山。 エアギターという種目があるけれど、エア三味線という種目も出来たら面白いかも。それほど、腕の上げ下げ、撥さばき、左指の動き、全てがカッコ良くロックンロールの如し。世界一!と言っても過言ではありません。 ![]() ![]() ![]() 太鼓の若いお二人は、いつも山中師匠にコラコラ!と言われながら修行に励んでいるそうですが、厳しくも優しく時にコミカルなお師匠さんと、お師匠さんを慕う弟子達の練習風景を想像すると、良いものですね〜♡ 「イナズマゴロピカ」 笹の葉さらさら…と七夕さまの旋律で始まった最後の曲。徐々に黒雲が近づき、ぽつ、ぽつ、と天空から大粒の雨が。遠雷ごろごろ〜。きたきた来た〜。驟雨を想わせる激しい音とリズムは、火にかけたヤカンのお湯にふつふつと泡が沸き次第に煮えたぎる感じにも似ています。 今年の「イナズマゴロピカ」はまるで線状降水帯、土砂降りの雨。激甚化する地球温暖化の危機をリアルに感じて慄く私です! ![]() ![]() 万雷の拍手拍手。アンコールは花笠音頭。 お客さんも、にこにこ笑顔の準也さんと一緒に揉み手を打って、 チョイチョイ、はぁやっしょ〜まかしょ〜と口づさみました。 ![]() ![]() さらなるアンコールは、三人の力強いパフォーマンスを再び🎶 命の尊さ、出会いと別れ、明日への希望を感じさせていただいたステージに感謝感激です。 信人さん、鷹さん、準也さん、本当にお疲れさまでございました。 森のスズコ |
--和楽器のトリオは見ごたえ満載!--
津軽三味線奏者は、演奏もトークも聴衆を引き込む力があり楽しみながら聴けた。 和太鼓奏者は、最初から最後まで息をつく間もない熱演に圧倒された。 トリオの音のバランスがどうなるのかなと思っていたら、どちらも負けない響きで大いに最後まで楽しめた。 来年も楽しみだ!
by: サラトガ * 2023/09/12 20:33 * URL [ 編集 ] | page top
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